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その神社は、二人で切り盛りするには少し大きすぎる神社であった。
しかも一人は何かがおかしい。
「そこの人は?何やらずっとこっちを見ていたようですが?」
先ほどから俺たちの方を向いていた少女は、今も焦点の合わぬ目で空を見つめている。
「彼女は私の同居人。そしてここの大家さん」
……大家さんの意識がやばい事になっているような気がするけど?
「彼女、少し変でしょ?」
「変わった方だとは……思います」
「大家さん、最近ずっとああなの」
最近……ってことは、その前まではああではなかったのか。
「私が話しかけてもうわの空。ずっとあの調子」
「何かあったんですか?」
「知らない。……まあ、心当たりはあるかもね」
彼女についていくと、神社の裏側に普通の住宅のような建物があった。
その木造の家はツタや苔にまみれており、お世辞にも清潔とはいえない。玄関の引き戸までツタが絡まっているような有り様だ。
「少し汚いけど雨宿りくらいはできるよ」
「まさか、こんなところで寝てるんですか?」
「住めば都……よ。どんなところでも」
そう言いながら、引き戸を開ける彼女に続き、俺は足を踏み入れる。
その中は、なんというか……質素だった。
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