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序章(大きい不良)
俺が所属する高校、桜田高校があるのはこの由博市で東地区と呼ばれるところだ。
市を分断する鳥城川の東側だから東地区。
そして俺の家はその反対、西地区にある。
俺の学校……その屋上のコンクリートは無機質で冷たく、そこかしこにある水たまりは乾くことを知らない。
「今日も寒いですね、相変わらず」
「……」
「なぜこうも寒いのでしょうか」
「……春だからな」
「答えになっていないと思いますよ?」
「そうか?」
屋上は、涼しいと呼ぶには肌寒すぎた。
俺は、青と白の空に煙が棚引くのを横になりながら見ていた。
煙というのはもちろんタバコ……いわゆる紫煙だ。体に悪いとか発育によくないだとかその他諸々の理由で未成年には禁止されている代物。
そのような物の煙を見ている。
ということは「それ」があるわけだが、それは俺の物ではない。
「それっておいしいのでしょうか?」
「普通」
無愛想な返事が返ってきた。
時刻は午後二時、特別な用事で午後の授業がない限りは授業中……。
つまり俺と、この隣の友人はサボりで、ただ空へ登る紫煙を二人で眺めている。
「タバコの種類とか知らないのですが、ニコチンはどれくらい入っているんですか?明人」
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