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 さすがに小柄な男の語調も荒くなってきた。  これだけの異常事態だ。慌てているのが自分だけで、隣の野郎が平然としているのだから腹立たしくもなる。  するとまたドアベルが鳴って新たな客が入ってきた。  今度は、見た途端に異常だと分かったので、小柄な男は例によってメニューに集中しきっている相棒の肩をバシバシとたたいた。 「おい今の客! どーみても! 間違いなく! 人間じゃないぞ!」 「ふーん。具体的にどんなのよ?」 「えっと、手が六本あって足が四本あって翼があって尻尾があって目が十個あって胴体がやたら長かった。いったいなんだあのバケモンは」 「そんなのいるかで、イルカだろ?」 「なるほどイルカか。おい次の客もやばいぞ! 顔はサル、胴体はトラ、尾は蛇だった! ピョゲ~って鳴いてたぞ!」 「それはトラツグミの鳴き声だ。妖怪ヌエはトラツグミの声で鳴くらしいぜ」 「へ、へー。そうなのか。いや、やっぱり妖怪なんだろ!? バケモンなんだろ? お前もこの異常さに驚けよ!」  小柄な男はそれこそ鬼気迫る様子で相棒にせまった。  それは仕事場でも見えたことのないような真剣な表情だった。  これにはさすがに適当に対応できないと思い、大柄の男はメニューから顔を離して、まっすぐ相棒の男の目を見て答える。 「落ち着けよ。バケモンなんてどこにでもいるだろうか。  甲子園には魔物が住んでるし、テレビつけたらデーモンが相撲の解説してるし、うちに帰ったら鬼嫁も待ってんだぜ? ホラ。普通のことだろ?」 「どれも慣用句的表現だろうが!?」 「お前、きっと疲れてんだよ。いいかそういう時はだな。……おっとウェイターさん。注文頼むよ。俺はハンバーグで、こっちのやつにはオムライス」 「自由人か!? 僕の料理まで勝手にチョイスしてるし!」
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