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 いかにもサラリーマンといった風体の二人の青年が、す っかり暗くなった裏通りを歩いていた。  歓楽街に隠れた名店があるというので足を向けてみたのだが、半時間近く探し回ってもそれらしい看板は見つからない。二人は途方に暮れかけていた。  先を歩いていた大柄な男が言う。 「いったいぜんたい、この通りはけしからんな。右に行ったり左に折れたりと、自分がどこにいるのかさえ分かったもんじゃない」  もう一人の小柄な男が言った。 「まったくだ。思えば、ここを教えてくれたのは下請けとはいえ同業者だ。客のいくばくかを僕たちに取られた意趣返しにデタラメを教えたんじゃないだろうね」 「しかし腹が減った。馬鹿な部下や、マヌケな客の相手ばかりしてきたご褒美にうまい店に行こうなんて言うんじゃなかったぜ。道連れにしてスマンな」 「君は昔から興味が向いたら他が見えなくなるからね。仕方ないさ。表通りの適当な店に入ろう。チェーン店だろうが、酒が入れば同じことだよ」  そんな話をしていると、不意に目の前でビルの裏口が開いた。  二人と同じようなスーツ姿、面長で糸のような眼をした、どこか狐のような風貌の男である。よく見れば知った顔で、向こうも、すぐに二人に気がついた。 「これはこれは。奇遇ですね。もしかして、ワタクシが先日お勧めしたお店をお探しですか?」
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