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「それより、俺はどの料理にしようかな、と」  大柄の男は、またメニュー表に顔を突っ込んでいた。  しかし小柄な男の方は、一度気にするとどうしても気になってしまう性質だったので、やがて彼はあっちへキョロキョロ、こっちへキョロキョロと目を向け始めた。  そうしていると、彼の横からカウンターの方に首を出す客がいた。  OLらしい若い女で、明るい声で「すいませーん。こっち注文おねがーい」と言う。急に横切ったことを失礼と思ったのか、彼と目が合うとニコリと笑って頭を下げた。 「ごめんねさいね」 「いやいや、気にしないで……え!」 「あら? どうかしました?」 「いやいやいやいや。ななななんでもないよ」 「そう? ならいいの」  自分の席へと戻っていく女を横目で追いながら、小柄な男は再び相棒の肩をバシバシたたいた。 「おい! 今の見たか!?」 「だから見てねーよ。さっきの横から首出してきた女がどうかしたか?」 「それ! 首だよ首! さっきの女の人、首がめちゃくちゃ長かったんだよ!」 「それがどうした。足が長い女もいれば、指の長い女もいる。首だって長いのもいるだろうさ」 「そういうレベルじゃないんだって! 蛇みたいにニョロニョロと長い首で、ほら、後ろのテーブルに座ったままで首だけを伸ばして声をかけてたんだよ! 妖怪ろくろ首みたいに!」 「ほら、きっとその女は店の料理をすごく楽しみにしてたんだろ。首を長~くして待ってたわけだ。それだけ期待のもてる味だという事だな」 「ダメだ。こいつは夢中になると、目先のこと以外見えなくなる奴だった」
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