三章  呼ぶ声と_1

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「……なぜ、おのが出てくるんです」 『誰かに連絡とって面倒見てもらうって条件……小野くんにしたんじゃないかと思ったんだけど、違ったかい?』  見抜かれている。最終的に小野を選んだ理由まで言い当ててきそうでこわい。  沈黙は肯定だが、面白そうに笑っている顔が脳裏をチラついて反論するのが馬鹿馬鹿しくなった。これ以上遊ばれるのはごめんだ。 『あ、そうだ。貴船にお参りに行っただろう?』 「?はい。それが何か?」 『貴船は、恋を祈る社でもあるんだよ。縁結び、効果があるといいね』  今度こそ言葉が出なかった。遊んでいるのか、カマをかけているのか、それとも他の何かか。猜疑を通り越して呆れに近い。一体この人は。 「どこまで知っているんです」 『さて、何の話かな?』 「……」  わかりやすくはぐらかされて、どう答えたらいいものかと思っていると携帯が充電が切れそうだと主張を始めた。クスクスと笑う声が聞こえる。 『一応、こっちの皆も心配してるんだから連絡は取れるようにしておいてくれよ?』 「はい、すみません」 『あと、八つ橋は腐らないうちにね?「宿題」も忘れずによろしく』     
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