chapter1

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 灰色とも言える、私の中学校生活があと数ヶ月で終わる頃。  受験なり部活なり人間関係なり、様々なストレスを抱えた私がやって来る場所は決まっている。  その場所の名前は誰に聞いても分からなかったし、たぶんこれからも知ることはないだろう。  歩幅を広くし私は目的地へと直進する。  そこに着くまでの暇潰しと言ってはなんだが、右手にはウォークマンを握りしめ、あらかじめ射し込んでおいたイヤホンを耳にはめて、音楽を聴きながら歩く。  次々と踏みしめていく道の幅は狭く、軽トラック一台が収まるくらいで、両側には無差別に草花が群生している(その先には段差のある川と、畑があり、人当たりの良さそうな老人二人が農具を片付けている)。  その中から一輪の薊を見つけると、あれに触ったら痛いかな、と言う軽い好奇心を持ちつつも、私の内のほうに留めてまた正面を向いた。  視界の先にあった赤い屋根の家が大きくなるに連れて、目的地にも近付く。着いた。  堤防を降り、鉄格子の仕切りを乗り越えて、私は今そこに立った。
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