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足元は既に水に沈んでいて、照り付けられた肌を癒してくれる。サンダルを履いていたので、そのまま浸かっていても大丈夫だ。
暗めのJポップが流れるウォークマンを止めてから、コンクリートの地面に埋もれた沢山の石の中から適当に選んで、私はそこに座る。
お尻に確かな温もりを感じると、左手で大事に抱えていた本を開いた。ここからは、私の世界だ。
てっぺんから降りた太陽に照らされ、その暑さを補うように足元の水が流れる。聞こえてくるのは微かな私の呼吸音と、川の音と、風の音と、目を覚まし始めたセミの声だけ。
多種多様の悪意が交錯する学校とは隔絶した、私だけが知る世界。
私は今日もそこで、本を読む。はずだった。
「あれ、千尋ちゃん?」
言い忘れていたが、私が今ここにいる場所は折り返し階段のような形になっている。堤防と一体化したその場所は、入り口が川と繋がっていて、段差を避けてきた川の一部がそこを通ってまた川に流れていく。
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