三章  呼ぶ声と_2

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 至極真面目な顔のまま似非関西弁(?)でお茶に誘ったかと思うと、鞄から白いビニール袋を出して寄越された。よくわからないまま手を入れて一つ掴んで取り出した。 「おぉ……ですてにー」 「……素直に礼が言い難い反応をしないでもらえるかな」  簡単な紙の包装がされたそれを開くと、縁結びのお守りが入っていた。 「ちなみに、他には何が?」 「ご当地白猫ストラップとか、固い八つ橋とか、お守り系だと交通安全、無病息災、安産祈願、その他諸々ってトコっすね。会えた人に先着順で配ってます」  がさごそとお土産袋を仕舞いながら歩き出す文月君についていく。安産祈願よりは困り方がマシかと、もらったお守りをポケットに入れた。  駅の改札の前を素通りして藤崎邸がある方とは線路を挟んで逆側に出る。 「この後なんか予定あります?」 「特には。夜までに帰れればいい」 「んじゃドリンクバーでボーイズトークとシャレこみましょう!」 「凍える前に帰るよ」  学生の財布に優しいファミリーレストランに入ると、半端な時間のせいか客はほとんどいなかった。適当にサイドメニューの軽食とドリンクバーを頼んで各々飲みものを手に席に着く。 「さて、と」  すぐ傍でガタと音がして顔を上げると、テーブルに身を乗り出した文月君が僕の耳に顔を近づけて小声で問うた。 「こないだ言ってた告白してきた友達って小野サンすか?」 「は!?」     
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