三章  呼ぶ声と_2

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 今度は僕がテーブルを揺らす番だった。軽く飛び退いて文月君を凝視する。ついできたばかりのカフェラテが少しソーサーにこぼれた。  話がぶっ飛びすぎて思考が追いつかない。僕から離れて座り直した文月君は気にした風も無くメロンソーダを一気に三分の一程飲んだ。 「あ、オレそーゆーのヘンケンないっていうか、オレ自身どっちでもイケル人なんで、遠慮とか色々いらねっすからね」 「…………」  どこにどう驚いたらいいのかわからなくなってきた。 「先パーイ?ダイジョーブっすかー?」 「……合宿中の話とかを、するものかと」 「それは皆で集まった時にすればいっかなって。で、何があったんすか?」 「何かがあったことは決定事項なのか」 「だって顔違いますもん。髪型違うからかとも思ったっすけど、そうでもなさそうだし。オレらが京都行ってる間に何やらかしたんです?ゲロっちゃった方が楽になりますよ?ほらほら」  飲食店には相応しくない台詞に訂正を入れることさえできずに視線を逸らす。 「……つーか、小野サンってのは否定しないんすね」 「あ」 「お待たせいたしましたー」   驚きの波状攻撃をくらって混乱しているうちに、誤摩化すこともできずに肯定してしまったことに気付く。     
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