集合写真

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 それは第一試合で起きた。  大激戦の末、なんと僕達は勝利をおさめたのだ。  今のチームになって以来初めての公式戦勝利。  当然の様に一回戦負けを覚悟していた監督も大喜びで、即座に部員全員を集めて撮ったのがこの写真だ。  驚いたことだが、試合後、先輩達がすぐさま詫びを入れにきた。  結局、これが不味かった。  キャプテンは平和主義者の仮面を戻し、僕達の胸のエンジンはあっさりと火を落としてしまったのだ。  あの時、先輩達が軽い気持ちで「まぐれだろ」と言ってくれていれば、僕達は甲子園に出られたかもしれない。と、今でも本気で思っている。  結局、僕達は次の試合で負けて、あっさりと夏は終わった。けど、この一勝は今でも僕達にとってかけがえのない宝物だ。  「あら、二人して何のお話?」  そう言いながらリビングに入ってきたのは、僕の妻だ。 「やあ、マネージャー。何時見ても綺麗だね」  荻田の言葉に、まんざらでも無さそうな顔を浮かべている。  要するに彼女は、当時野球部のマネージャーだった。ありがちなところでは、キャプテンと付き合うものなのだろうけど、あのときのキャプテンはそれどころじゃなかった。何をおいても野球一筋。そして、当然のようにそれに引きずられた僕達もマネージャーに目を向けている暇などなかった。というよりも、そんな暇、与えて貰えなかった。  たまたま大学で再会して、交際だの結婚だのと進んだのは、ずっと後の話だ。  当時、たった一人のマネージャーで、もちろん人気もあった。  結婚するって知 らせたときには、みんなから手荒い祝福も頂いた。  その時にも散々力説したが、とにかくあの頃は野球に必死で、野球しか見えていなかった。本当にその点で僕達は純粋だったと思う。
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