2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「そりゃね。でも、人を教えるとなれば話は違うさ。僕達がもう一度おっさんチームを作るって言うなら、飛びつきたいけどね」
「そうね」
彼女はそう言って、ちょっと困ったような笑顔を浮かべた。
「正直なところ、ちょっと怖いんだ。失敗して、未来ある少年たち達が野球嫌いになったらどうしよう、とかね」
彼女は僕の言葉を聞いて、それから考え込むような表情のまま少し黙り込んだ。僕がビールを二口ほど飲んだところで、再び彼女は口を開いた。
「私ね、あなた達がチームを作ったら、あの子を入れようと思っているの。ゆくゆくは、エースで四番になるかもしれない」
「どうかなぁ、僕の息子だぜ。八番ライトがいいところじゃないか?」
「それでも良いわよ。ただ、あの子にも野球の楽しさを感じて欲しいの」
そういいながら、彼女はそっと僕の肩に頭を預けてきた。
「それでね、いつか二人であの子の応援に行くの。きっと凄く楽しいと思わない?」
「いいね、悪くない」
「それなら、あの子が野球を楽しむきっかけを、あなたが作ってあげてよ。あなただって甲子園に夢を持っていた野球少年でしょ?」
あの子がその道の先へ行ってくれるかもしれないわよ。彼女はそう言ってにっこり笑った。なんだかんだ言って、彼女も野球大好き少女だったわけだ。
「どうりで、荻田の味方をしたわけだ」
「それにね」
最初のコメントを投稿しよう!