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動揺したのは小野も同じようで、すぐに前を向き直して吃りながら発した声は裏返っていた。
コンビニで夕飯とおやつを調達した小野が最終的にスクーターを止めたのは、僕が京都からとんぼ返りしてきた時に立ち寄った公園だった。車道の端に寄せて降りて中に入る。
前回は日付が変わるまであとわずかだったから人気はなかったが、今日はまだ宵の口だ。公園の中央、フェンスに囲まれたコートではしゃぐ若者たちの声が響く。植木越しで直接は見えないが、恐らく同年代だろう。
楽し気な声をBGMに、懐かしくも思えるベンチに座った。お茶のペットボトルを玩びながら、小野がアイスの封を切るのを眺める。小野が白い塊の一つにかじりつく。薄い求肥で覆われたそれは、少し尾を引いてからちぎれて小野の口に収まった。
「草町も食う?」
「……一口」
丸々食べたら腹が冷えそうで買わなかったけれど、まだ昼間の熱気の残る蒸し暑い空気に耐えかねて味見を乞う。楊枝に刺さったそれは食べやすそうにやわらかく溶け始めていて、受け取ったら落としそうだった。差し出された塊に口を寄せる。
「へへ、デートっぽい」
「……そうか?」
照れ臭そうに笑う小野を眺める。胸の辺りが痒いような、締め付けられるようなこの感覚はなんだろう。
「ここで、何をしたかったんだ?」
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