聖上からの来訪者

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聖上からの来訪者

 世界は混沌としている。  いつの世も、どこの世界も、毎日のように尊い命がこの世を去って行き、どうでもいい命が腐り果てながらも生き続けていく。尊い死者の名は誰の記憶にも深く残らず、腐った生者がこの世の歯車を回して歴史に名を刻んでいく。  それは人が人として存在する世界である以上、どうしても避けられない輪廻。人が築き上げる歴史と未来は常に似通った螺旋階段。栄枯盛衰、盛者必衰は世の理。破壊と再生を経て、過去の過ちを学んだと口々に言う人々は似通った過ちを幾度となく繰り返し行ってしまうもの。  故に、世界は混沌としている。それはどこにも例外はない。  世界を客観的に見れば、そこに見えるのは常に『力の差』だ。資金力の差、権力の差、軍事力の差、そんなものが嫌でも目についてくる。  それはこの混沌とした世界でも何も変わらない。荒れ果てた無情の大地に住まう力なき凡百の人間と、恵まれた場所に立つ一握りの勝者。荒れ果てた大地を這い蹲る者達は空を見上げてそこを目指し、恵まれた勝者はただ荒れ果てた大地を見下ろす。それが定められた運命であり、従うしかない人の世の理。     
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