ラビリンスマネージャー

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 そう言ったアイテムはそのダンジョンの管理者が今まで得た収入の中から必要経費として自腹で用意する。全ては人をおびき寄せるためだ。そしてそのアイテムは安価なものよりも高価なものの方がいい。故に、どのダンジョンの管理者も最後に手に入る最深部に設置するアイテムは無くなれば惜しいと思うものを用意するのが普通なのだ。そしてヴィンセントもその定石に従っていたのだが、今回はまんまとそのアイテムを持ち去られてしまったのだった。 「替えのアイテムを設置するのは良いけど、それがダンジョンにあるらしいという情報を流さなきゃならない。情報屋に意図的に情報を流してもらうのにも金がかかるし、そもそも替えのアイテムの備蓄ってあったか?」  ヴィンセントはデスクの椅子から立ち上がり、部屋の中を物色し始める。人が欲しがりそうなアイテムを探すのだが、それらしきものは一切見つからない。 「―――――こいつはダメだな」  めぼしいものを見つけたヴィンセントだったが、宝箱に設置するわけにはいかないものであったため、丁重にデスクの上に置いて再びアイテムの物色を始める。 「それはなんですか?」  ヴィンセントが丁重に扱ってデスクの上に置いたものをベアトリクスが首をかしげて凝視している。  デスクの上にはフラスコのようなガラス製の入れ物に黒一色の液体のようなものが入っている。透明度は無く、まるでそこだけ真っ暗闇と錯覚してしまいそうなほどだ。 「ああ、それは『闇の雫』だよ」 「『闇の雫』・・・ですか?」  黒い液体の正体を聞いてもベアトリクスは難しそうな表情をするだけ。彼女の頭の中に今聞いた単語は存在しないのだ。     
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