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主な収入源である人を狩るのがダンジョンだ。しかし、そのダンジョン自体が人間にとって優しくなりすぎている。現に、水晶玉に映ったゴーレムは整備された足元で戦い易くなった人間たちの手によってさっさと倒されてしまい、最深部に人を誘い込むために置いてあったアイテムは侵入した人間たちによって持ち去られてしまった。
「えっと・・・多くの人が足を運べば・・・口コミで広がるかと・・・」
「それは人里離れたダンジョンだけだよ。人が近寄らない場所にあるダンジョンは人をある程度生きて返す。それで口伝えが新たな獲物となる人間を呼び寄せてまたある程度生きて返す。そうしないとそのダンジョンを知っている人間がいなくなるからだ」
だが、ヴィンセントが管理しているダンジョンは世界最大の都市アレクサンドリアから子供が一人でも行けてしまう程の近距離だ。そんな場所にダンジョンがあることはアレクサンドリアに住む住人であれば子供でも知っている。つまり、これ以上ダンジョンの名声を広めるために人を生きて返す必要はどこにもない。どれだけ人を狩ろうと、ダンジョンのことを知っている人間が途絶えることなどもう有り得ないのだ。
「はぁ・・・人寄せの宝箱だって安くないってのに・・・」
人は物欲の有無にかかわらず自分の利益になる場所にしか足を運ばない。ダンジョンに足を運ぶのも金銭的な収入につながるアイテムなどが見つかる可能性があるからだ。
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