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そんな声に包まれた中心のスペースには二人の青年がいる。上半身裸で拳を握りしめてお互い向かい合っている。二人の青年が相手を見る目は真剣そのもの。敵意などはないが相手を倒すという強い意思がその眼光から感じられる。
「ほら、来いよ」
一人の青年が相手を挑発する。頬を緩めて笑みを浮かべ、余裕を見せつける。
「調子に乗んなっ!」
挑発された青年は軽快なステップで相手に詰め寄ると躊躇なく拳を繰り出す。顔面を狙った鋭い右ストレートだ。
しかしその右ストレートが相手に当たることはない。挑発した青年は右ストレートをしゃがみ込んで避けると、接近してきた相手の顎に下から強烈なアッパーカットをお見舞いする。
「勝負あり! またクーの勝ちだ!」
アッパーカットを食らった青年が仰向けに倒れ、天井を定まらない目で見つめている。その様子を見た周囲の男達の声は一層大きくなった。
割れんばかりの歓声に、勝ったクーと呼ばれた青年は余裕の笑顔で手を振って応える。まるで格闘技の試合に出で圧勝した有名なファイターのようだ。
「ほらよ。今日のファイトマネーだ」
「おう。サンキュー」
クーは顔見知りの男から金を受け取ると、上着を着て懐に入れる。そんなクーを取り囲むように彼を歓迎する男達が集まっている。
「クーのおかげで今日も稼がせてもらったな」
「これくらいの楽しみがなきゃやってられねぇぜ」
「次はいつやる? クーに勝つ自信のある奴探せよ」
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