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プロローグ
「ねぇ・・・私と一緒に働かない?」
言い慣れたように一人の女性は声をかける。
「待遇はできる限り優遇するわ。あなたの力が欲しいの」
女性は立て続けに言葉を発する。
その場所は特に決まっていない。彼女の目を惹く存在に出会った時、彼女は毎回変わらない調子で同じ言葉を口にするのだ。
そしてその誘いに対して必ず疑問が返答として彼女にぶつけられる。
「え?何故?そんなの決まっているじゃない」
女性は得意げな笑みを浮かべ、いつもと同じ内容の言葉を続ける。
「あなたの力が私には必要なのよ。その力に対する対価も払う準備は出来ているわ」
女性は目を惹く存在の力を評価して誘いの言葉をぶつけている。そしてお決まりの言葉の応酬が続く。
「嫌だなんて言わないでよ。毎日退屈しないわよ。住居も提供するし、仲間達も気のいい人達ばかりだから、毎日楽しいこと間違い無しよ」
女性はとにかく引き下がろうとしない。目の前の存在をどうしても自らの手中に引き入れたい一心で交渉を続ける。
「え?私が何者か?」
しつこく交渉を続ければ彼女の存在が気になってくる。この会話もお決まりだ。
「私は『帝国領』に所属するギルド『蒼海の守人(オーシャンブルー)』のオーナー。名前は『リシャイン=ルーパウルス』。あなたをスカウトしたいの」
女性は笑みを浮かべながらも真っ直ぐに相手を見据える。
「私と一緒に全ギルドの頂点を目指さない?」
これにより返答は二つに分かれる。誘いに乗るか断るかの二つに一つ。誘いに乗った者は正式な手続きを済ませてギルドメンバーとなる。断った者にはしつこく交渉を行うか、今は距離を置いてまた日を改めて交渉を行う・・・そのようにして優秀な人材を経営者自らが発掘してスカウトしていく。
ギルドに所属して仕事場に向かう者達とは違う。優秀な人材を集めギルドの戦力として仕事を集めてくる。新人が入ってくればギルドに役立つ人材になるように育成して成長させる。金銭の工面やギルドメンバーの管理、周囲への宣伝や情報入手努力など、腕っ節ではなく様々な能力や努力が求められるギルドの経営者。
数多くあるギルドの中の一つ・・・『蒼海の守人(オーシャンブルー)』のオーナーである『リシャイン=ルーパウルス』は今日もギルドのために忙しくあちこちを走り回るのだった。
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