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竜姫士の誕生
―――――我が国のお姫様は少々変わっている。
とある国の国民は誰もがそう言う。
―――――いや、変わっているのは彼女だけかもしれない。
その国の国民は必ずそう訂正する。
―――――けれども、誰一人として彼女を嫌う人はいない。
そう言った後、続けて国民は口をそろえて言う。
―――――彼女がお姫様でよかった。
その時、全ての国民が笑顔となるのだった。
広がる海を傍らに、広がる草原を目の前に、数々の家々が並ぶ大きな町ができていた。日々多くの船が港へ到着し、日々多くの人が出入りするその町の中心には宮殿とも呼ばれる大きな城があった。その城を中心に広がるようにできた城下町。城と城下町をすべて含めて一国とされ、人々はその地を『アルトリス』と呼んだ。
大きな城の上層階の中心部。重圧感さえ漂う国王の謁見の間。豪奢な椅子に腰を掛ける髭の御仁がこの国を統べる国王。その両脇を護衛の兵士が固め、さらに謁見の間全体には二十を超える屈強な兵士と数名の将軍や文官がいた。
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