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振るったレイピアを腰に携えていた鞘に流れるような動きで収めて一息つく。
息が切れ、汗が流れる王女は実に美しかった。お転婆姫と呼ばれる彼女は周辺各国でも群を抜く美しさを持っているともっぱら評判なのだ。その美しさは美の女神の祝福を受けたとさえ言われるほど。黙ってお淑やかにしていれば引く手あまたな彼女だが、彼女の性格がそれを許さない。
「剣のお稽古などスケジュールには一切ございませんが?」
「それはわかっています。ですから、自らスケジュールを調整してその時間を作り出すことにしました」
滴る汗と笑顔がまぶしい。メイドは同じ女性でありながらも魅力あふれる王女の笑顔に不覚にも一瞬ドキッとさせられてしまう。
「調整したとはどういうことですか?」
気を取り直して冷静さを保つメイド。心の中で王女がどこの馬の骨ともわからぬ男に現を抜かすようなことがあってはならないという国王の言葉が今ほど理解できると思ったことは無い。
「タリム。良いですか? 礼儀作法、立ち振る舞い、マナーと、小さいころから変わらず続けているお稽古はもう大丈夫です」
美しさを見せつけるかのように胸を張る王女。気心の知れたメイドのタリム以外の前であっても、彼女は一切傲慢にはならない。
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