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「タリム? そ、そんな時間はありませんので今日は手早く・・・」
「なりません。一切の妥協は許されません」
「ほ、本気ですか?」
「ええ、私は常に本気でいるつもりです」
「ひ、ひぇ~ん・・・」
鬼気迫る様子のタリムがティアリナへと詰め寄る。そんなタリムの心の中は美しすぎるティアリナへの大きな羨望と僅かな嫉妬が複雑に入り混じっている。そして同じ女性でありながらティアリナの肌に触れたいと思わされたタリム。まるで魅了の呪いにかかったかのように、強引にティアリナの体を洗いに取り掛かるのだった。
私服に着替えたティアリナは城を抜け出して城下町へと繰り出していく。ごく普通の町娘のような安価な衣服は王女には一切相応しくは無い。靴は日々城下町を出歩き続けたせいかかかとの部分は少しすり減っており、外観を見ただけでもかなり傷んでいる。
お世辞にも良い物を着ているとは言えないがその格好で鼻歌交じりに城下町へと繰り出す王女。しかしそんな衣服を身に纏っていても、城下町を彼女が一度歩けば周囲は今まで以上に活気づく。
「おや、王女様。今日はいい果物が入ったよ」
露店を出しているおばさんが笑顔で声をかけてくる。
「ティアリナ様。お行儀なんて気にしないで一つどうだい?」
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