竜姫士の誕生

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「幸い、人が集まっているところが居場所だとわかるのが唯一の救いですね。見失うことはありませんが、近づくこともままならないのは臣下として困りました」  とにかく人をかき分けてティアリナとの距離が離れないように人ごみを突き進む。しかし近づけば近づくほど密度が濃くなる人の密集地。中心部はもはや人の壁が立ち並んでいると言うしかなく、何度試みても近づくことは極めて困難だった。 「しかたありません。離れないように様子を見るとしましょう」  タリムは一般の民衆に紛れ、距離を取ってティアリナを追いかけることに決めた。  一方、そんなタリムの追跡など気付いていないのか、城下町を自らの思うままに歩いていくティアリナ。その様子は王女というより有名人のようだった。 「え? いいのですか? ありがとうございます」  街を歩いていると商店から次々に果物や野菜などが差し出される。それらを次々に受け取っていくと両手にいっぱいになっていく。途中でかごをもらい、貰った果物や野菜をかごに入れればかごが山盛りになってしまう程の量だった。 「あっ、お金を払わないといけませんね」  ティアリナが自らの服のポケットに手を入れ、ごそごそとお金を探している。 「いいよ。王女様からお金なんてもらえないよ」 「そうだ。それに一回払ってもらったけど、金貨で払うんだもんな」     
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