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その謁見の間に呼び出されたのは一人のメイド。年は十五を超えたくらいだろうか。黒いサラサラの長い髪に落ち着いたシックなメイド服が良く似合う清楚な顔立ち。仕事の出来そうな目力と雰囲気が彼女には備わっていた。
「私が姫の尾行を・・・ですか?」
そんな彼女は国王からの思いもよらぬ命令に本来持っている目力や雰囲気が今は微塵も見当たらなかった。
「そうじゃ。聞くところによれば城下町のさらに外へ頻繁に足を運んでいるそうではないか。一国の姫ともあろう者がそのような身勝手な振る舞いは許されぬ」
威圧感漂う国王の言葉は重い。この国において彼に従わぬものは死罪になってもおかしくはないと言っても過言ではない。
「ですが、姫のお転婆ぶりは今に始まったことではありませんが?」
「わかっておる。今までは子供であった故、少々のことは見逃していた。しかし十五を超えればそろそろ婚姻の話があってもおかしくはない」
政略結婚の考えが国王にはあるのかもしれない。その考えを実行に移す前に、姫自身が一国の姫としての自覚ある行動ができるようにしたいという思惑があるのだろうか。
「婚姻と申されましても・・・第八王女である姫は嫁ぎ先が無いとかなり前から国王様ご自身がお嘆きになっておられませんでしたか?」
「むっ―――――」
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