3人が本棚に入れています
本棚に追加
お転婆な姫はこのアルトリス国の第八王女。第一王女から近隣国や友好国へと政略的に嫁いでいったことで、アルトリスの近辺に争いの危険は皆無であった。第八王女であるお転婆姫は昔から嫁ぐ当てがなく、花嫁修業などは気にせず自由気ままに育ってきたのだ。その結果のお転婆姫なのだが、それを今になって咎めるのは少々筋が通らずおかしいとメイドは持ち前のできる女ぶりを披露した。
「私は年齢が近いこともあって姫とは長い付き合いになります。国王様のご命令となれば従います。ですが、明確な理由が無ければ納得はできません」
肝も据わっているメイド。国王に従わぬものは死罪になってもおかしくない状況でも自らの考えをはっきり述べるのはもはや彼女の性格と言っていいだろう。
「専属護衛もいたはずです。私よりそちらの方がこの任には適していると思われます」
一国の姫が城下町へ出るのに護衛がいないということはおかしい。そのため、信頼できる腕の立つものを護衛として起用していたのだ。
「その者なのだが・・・」
国王の傍らに居た将軍が呆れている。
「何でも『姫に口止めされてるんで言えないっす』だそうだ」
「・・・あのバカ護衛」
メイドは顔見知りの護衛の男を思い出して怒りを覚えた。
「護衛の方から情報が聞き出せないから私、と言うことですか」
「そうなる」
重厚な雰囲気が漂っていたはずの謁見の間がいつの間にかそれほど緊張しなくてもよい雰囲気へと変わりつつあった。
「任に就くのは一向に構いません。ですが私は明確な理由をお聞きしたいのです」
任務に就くことを了承したメイド。しかし、自らの考えには一切変わりない。
最初のコメントを投稿しよう!