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謁見の間を出たメイドは歩きなれた城内を堂々と歩いていく。日が差し込む渡り廊下や煌びやかな装飾が施されたロビーなど、彼女にとってはまるで家のような感覚の城はどこをどう歩けばどこへ辿り着くかという地図は完全に頭の中に入っている。
途中、城下町の警備に当たっている兵士達やその指揮官とすれ違う。メイドは彼らに道を譲って一礼を忘れない。この城の中でメイドという地位は決して高くは無い。例えそれが王族の専属メイドであっても、だ。
「話題になっていた空き巣、昨日捕まったらしいぜ」
「ホントか?」
「ああ、なかなかすばしっこい奴だったらしいけどな」
「俺は一回出くわしたことがあるんだ。逃げられたけどな。誰が捕まえたんだ?」
「自警団だってよ」
「うわぁ、俺達も頑張らなきゃな」
通り過ぎる兵士達の会話は城下町での犯罪に関することだ。そして自警団とは民衆が自らの街を自らの手で守ろうという呼びかけから発足された、民衆の民衆による民衆のための治安維持部隊だ。兵士達のように多大な兵力と組織力を持ち合わせない反面、細かい情報の共有や収集といったその土地や地域に合った仕事ができる点が自警団の優れたところだった。
「最近騒ぎを起こしている奴らいなかったか?」
「いたな。異国の船で商人みたいにやって来て金目のものを奪って逃げる盗賊団が最近このアルトリスに入ったって噂だ」
「じゃあ、そいつらは自警団に渡さず俺達で捕まえようぜ」
「ああ、人手を集めて港の調査だ」
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