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自警団は自分達のために、兵士達は自警団に負けないために、ただ統治して治安維持にあたっているだけでは堕落して腐敗してしまう組織も、民衆に一定の犯罪者確保の権利を与えることで相乗効果が生まれた。もちろん民衆の自警団が負傷するという弊害もないわけではない。だが、組織を長く安定させるためにはそういった試みもある程度は必要なのかもしれない。
「人の集まるところに犯罪あり・・・ですか」
誰もが良心だけを持って生きていくことなどできやしない。必ず社会の輪からはみ出す者がいる。必ず集団組織から外れてしまう者がいる。それは絶対に防ぎようのない出来事なのだ。いかに完璧なシステムを構築して社会に徹底させたところで、そのシステムに従えない者が必ず出てくる。人が集まって構築される人の世界の営みは、多くの協調と僅かな脱線が必ず存在するのだ。
「姫には知られないようにしましょう。面倒は避けるに越したことはありません」
一礼を終えたメイドは再び目的地へと向かって歩き出す。その彼女の頭の中には過去の記憶がよみがえっていた。
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