セントレントの陰姫

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 セントレント戦争は北のアセルガムドと南のオルポスティムの小競り合いから発展した全面戦争だ。戦争名の由来は戦場の中心となった場所、セントレントに由来する。一進一退の攻防が続く中、一向に終わらない戦争に国力が疲弊していく両国は和平交渉を行うことを決め、両軍が激突したセントレントを和平交渉締結の聖地として、そして両国のありとあらゆる干渉を禁じる二国間協定の中立地として半独立状態となっている。 「神格人は両国和平の象徴だ。だが、セントレントは両国共に軍事的介入ができない。つまり守備要員の兵隊を派遣して守りを固めることさえできないんだ」 「確かに神格人を押さえられてしまうと厳しいな。反乱軍や武装勢力が何かを言いいたい時には公の場で好き放題言えるようになる。そうなれば和平状態の維持どころか両国の関係にも影響がある―――――が、独立兵がいるだろ? かなりの数がいたはずだぞ。それじゃ物足りないのか?」 「内通者やスパイが入り込んでいる可能性もある。いざという時に独立兵が役に立たない状況になるかもしれない」 「そうか。つまり、使用人のふりをして諜報員となって内情を伝えろってことか」 「平たく言えばそうなるな。それにお前なら有事の時の対応は折り紙つきだ」  ビネマンは信用できる女性全員に声をかけている。その女性の中でもずば抜けて戦力になるのはレカンナ。信用の上に実力が乗っている珍しい彼女だが、如何せん彼女には家事スキルがなさ過ぎる。まずは合格者を出すことが最優先だが、有事の対応に長けた者が合格するに越したことはない。低確率でもそれをビネマンは狙っているのだろう。     
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