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「雇用対象職業が使用人なら私は絶望的だろう。それでもいいのか?」
「ああ、そこは気にしていない。手間賃はこれでどうだ?」
ビネマンが指を三本立てて見せる。
「もう少し色を付けろよ」
レカンナが五本指を立てて自らの希望を主張する。
「金は無限じゃないんだぜ?」
「ああ、だがこっちは畑違いの仕事だ。その分の上乗せは当然だろ?」
「・・・ちっ! わかったよ。じゃあこれで手を打ってくれ」
ビネマンが指を三本から四本に変える。レカンナは少し黙ってその指を見ていたが、一つ息を吐く。
「まぁ、いいか。じゃあそれで頼む」
両者の主張の間を取って手間賃の交渉は簡単に片付いた。
「それより俺は客だぜ? 茶やコーヒーくらい出せないのか?」
「飲み物が欲しいなら自分で持ってこい」
「けっ、そんなんだからいつまで経っても家事ができねぇんだよ」
「私にとって家事の必要性は低い。それだけだ。のどが渇けば水を飲めばいい。茶やコーヒーを用意する時間や手間は不要だ」
「相変わらず可愛げのねぇ女だな」
「悪かったな」
椅子から立ち上がったビネマンは自らが持って来た武装勢力の情報が記された紙を再びポケットに戻す。使用人募集のチラシはここに置いていくようだ。
「じゃあ頼むぜ。逃げたら二度と仕事まわさねぇからな」
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