セントレントの陰姫

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 戦争が終結して間もない。そのため国内の情勢は未だ安定しているとは言い難い。戦争で輸入された武器が大量に裏組織に流出したり、戦争によって生まれた貧困層などが裏社会に利用されて各地で暴れたりする事件は数多く、そういった未だ癒えていない戦争の傷痕に関する話題には事欠かない。 「それで? そいつらを潰せってか?」 「いや、奴らのアジトがまだわからねぇ。だからそれはまだだ」  レカンナの頭の上に「?」が浮かぶ。腕っぷしのみを買って彼女と仕事をしているビネマンだが、腕っぷし関係の仕事はまだ先だという。 「国の方からもお達しがあってな。奴らの何らかの動きに即座に対応できるように水面下で様々な用意をしておいてくれとのことだ。大事を未然に防げば多額の報酬も受け取れることになっている」 「へぇ、それで? 私に何をしろと?」  レカンナの得意分野はあくまで腕っぷしを生かした戦い。攻めるにしろ守るにしろ、彼女は戦いが最も己を生かせる場所であり、それ以外に己を生かせる場所を知らないと言っても過言ではない。 「レカンナ。お前に使用人になってほしい」 「・・・・・はぁ?」  クールな印象が一瞬だけきれいさっぱり消し去られてしまう。素っ頓狂な声にまったく意図が理解できていない表情、相手の考えがわからないことから返答をすることもできない。次の言葉が出て来ないのだ。 「しばらく殺しは無しになるだろうな」     
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