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三、激動の時
真っ暗闇の視界が目を閉じているからだと気が付いた。そのきっかけをくれたのは顔を幾度となく撫でる温かく湿った何か。
「な、なんだ?」
重い瞼を開けるのも一苦労という中、ゆっくりと開いた目が捉えたのは四足でケンの顔を覗き込む狼少女。今まで退屈そうな表情を見せていたリコだが、ケンの目が開くととてつもなく嬉しそうな表情へと変わった。
「ど、どうした?」
開いた目が周囲の状況を確認しようと様々な方を向く。首をひねり、顔を動かし、ようやく今の状況がわかってきた。
時刻はおそらくまだ夜更け。夜明け前なのは窓の外が暗いから。そして酒を飲み交わしていた時からそれほど時間は経っていない。それはケンが床に転がって眠っていたが、椅子に腰かけたまま食卓のテーブルに倒れ込むようにして眠っている旦那様がいたから。
「お前・・・一寝入りして目が覚めたから起きて来たのか?」
リコはケンの出した賄い料理のような夕食を平らげて眠りについた。眠りにはついたのだが、自分が眠りたいだけ眠ればもうベッドにいる意味はない。リコは部屋から抜け出してここへやってきた。そして床に転がって眠っているケンを見つけて、その顔を何度も舐めていたのだ。
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