一、再就職先

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 誰もが現政権の打倒が最上の解決案だと思い込んでいた。そしてそれを果たすことだけに集中していたせいで、その後のことはそもそも計画にはなかったのだ。住民生活を豊かにすると口で言うのは容易い。しかしそれを実行するには並々ならない知識と経験が必要だと知ったのは、奇しくも革命戦争が終わって悪政と罵っていた支配者階級の面々を一人残らず一掃した後だった。 「おまけに戦争中に起こった全ての悪行は現場の面々に押し付ける始末だ。それによってクリーンな新政府をアピールしたかったようだが、結局はそれさえも巡り巡って新政府の首を絞めることになったわけだ」  ケンの目の前にはコーヒーが入ったカップが置かれる。カップも相当長く使っているのだろう。古ぼけた様子がよくわかる。 「お前さんの投獄は大量虐殺者だからな。ワシの全権剥奪はその命令を実行させた上司だからだ」  言われなくてもケンにはもうわかっている。革命戦争で反政府革命軍を勝利に導いたのは他ならないケン自身だ。彼がいなければそもそも王を殺害することもできず、その後の上層部の混乱を引き起こすこともできず、支配者側だった飛行魔艇と制空魔艇の圧倒的な数の差を覆す糸口もなかった。その最大の功労者も終わってみれば断罪の対象だ。人を殺める刃は使い終われば用済みの粗大ごみとして廃棄されることになったわけだ。 「そんな新政府にしては珍しいですね」 「何が珍しい?」 「キリングブルーが未だに展示されています。それも当時の姿のままのです」     
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