一、再就職先

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 戦争記念館に入って真っ先に目に飛び込んでくるのは間違いなく飛行魔艇のキリングブルーだ。新政府はケンに大量殺戮者という戦争犯罪の全ての罪をかぶせた。それは戦争犯罪の象徴を戦争記念館のメインとして置いていることになる。切り捨てた歴史であるはずのものを堂々と置いているというのは異例中の異例の出来事だ。 「見た目だけだ。こいつはもう飛べんよ。新政府の指示でな。無力化されている」  ゼフは悲しそうに言った。彼は反政府革命軍の幹部の一人だったが、もともとは飛行魔艇を始めとした兵器を調整したり改造したりする技術屋だ。それが人員不足により前線に投入され、何の奇跡が起こったのか生き残って功績まで上げてしまった。それにより彼は幹部となってケンの上司という地位についたのだ。そしてケンの飛行魔艇を整備していたのも彼であり、その彼が飛べないと言うのだからそれは真実だろう。 「そうですか」  激戦を潜り抜けて生き抜いてきたケン。彼の脳内では二度と飛べないであろう愛機との思い出がフラッシュバックする。何度命の危機を感じたかわからない日々を思い返すのは苦痛だったが、それでも今を生きていられるのは愛機であるキリングブルーがあったからに他ならない。 「飛びたかったか?」 「まさか。命がけはもうこりごりですよ」     
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