序、回想

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 ありえないのだが、幸か不幸か、限りなくゼロに近い賭けに勝ってしまった。灯りの周囲を飛び回る虫のような飛行魔艇と制空魔艇を掻い潜り、航空城塞への接近を果たす。そこで航空城塞に触れるか触れないかのすれすれで旋回をする。その時に投下攻撃を行い遠心力で航空城塞へ向かって爆魔岩を放ち、旋回した後に爆魔岩を魔弾石の射出で射抜いて爆発させる。航空城塞の周囲の気流を完全に読み、その中で急旋回ができるだけの度胸を持ち、投下攻撃時に気流で機体が壊れないように守れるだけの技量があり、さらに旋回をして投下された爆魔岩を狙って撃ち抜ける腕があって初めて可能な攻撃だ。  限りなくゼロに近い成功という可能性の賭けに勝ち、自分の飛行魔艇は無傷のまま航空城塞を離れ、航空城塞は史上初めて空中で黒煙を上げながら大地へと墜落して大破してした。国内の都市部から大きく離れた山間部に墜落した航空城塞。搭乗員は乗組員から乗客に至るまで全て死亡した。  これにより自分は英雄となった。機体を空の色に塗っていたことからキリングブルー(蒼天の死神)などと言う異名までつけられたほどだ。しかし英雄生活はそれほど長くは続かなかった。  この戦いは革命戦争。自国の王を中心とした支配階級に抗った戦争。そこにあった圧倒的な戦力差をひっくり返して反政府革命軍は勝利した。しかし終戦後、最初に開かれた裁判で裁かれたのはあろうことか、自分だった。  航空城塞には非戦闘民である一部の招待を受けた国民と貴族階級の人達が大勢乗っていた。当時は国を挙げたお祭りの日で、航空城塞では何かの祝賀会が開かれていたのだ。最高の防御を持って祝賀会を成功させようとしていた王を見事に討ち果たしたが、その時に無関係な多くの人を巻き込んで殺してしまったことが裁判にかけられた理由だった。     
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