一、再就職先

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一、再就職先

 冷たく無機質な鉄格子が視界に入る生活が終了した。出所と共に十年間過ごしてきた世界からそれ以前に住んでいた日常に引き戻された。しかしそこに自分が知っている日常はもうどこにもない。  革命戦争以前は貧困にまみれながらも活力が感じられる生活があった。しかし今や街は革命以前の貧困を上回る悲惨さを見せている。 「・・・話には聞いていたが、想像以上だな」  貧困と無気力さが如実に表れた街並みは思い描いた夢や希望とは真逆の物だ。十年前の貧困時代の服装で出所してきたにもかかわらず、現在の街を行き交う人々よりも上質な物を着ているのではないかと思ってしまうほど。  ズボンは長年使っていたせいか色褪せ、上着は埃にまみれたせいか薄汚い。それでも洗濯をきちんと行ったことでまだ見られるレベル。街中にいる人達の衣服は破れが目立つほど傷んでおり、新しいものを買えないのか汚れも目立つ。戦争で崩れた建物も放置されたままで、どう見ても革命戦争は失敗だったとしか思えない。     
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