一、再就職先

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 落書きが目立つ戦争記念館に足を踏み入れる。中には革命戦争時に使用された武器や道具が展示されており、時間軸に沿った年表通りの順番に展示されている。そして内部の中心にある一番開けた部分。高級な邸宅ならばエントランスとなる部分だろう。そこにはかつての自分の愛機である空色の飛行魔艇が展示されていた。 「おぉ、来たか。思ったより早かったな」  空色の飛行魔艇を何やらいじくっていた一人の初老の男性が笑顔を見せながら近づいてくる。クタクタにくたびれたズボンとシャツの上に汚れが目立つ白衣を着ている。名札もついており、そこには肩書の戦争記念館管理人という役職名も書かれている。 「ゼフさん。お久しぶりです」  出所してきた黒髪の男は白衣を着た初老の男、ゼフに一礼をする。 「敬語なんぞやめんか。もう戦争は終わった。ワシはここに配属されたただの管理人だ」 「ですが、元は上官です」 「あくまで元だ。お前もワシも戦争後に全ての官職を剥奪された身だ。今はもう上下関係なんぞない」 「では、目上の人に対しての敬意として敬語を使わせていただきます」 「・・・ったく、ケンよ。お前は相変わらずだな」  十年の獄中の生活を経ても性格が変わらないかつての部下であるケン。彼の言動が久しぶりに十年前を身近に感じさせてくれた。苦しくとも活気があった、戻れない上に忘れ去ることもできない当時が鮮明に思い返される。 「管理人室へ来い。不味くてかなわんコーヒーなら出すぞ」 「では、いただきます」     
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