二、目的のベクトル

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「多くの貴族は外国へ亡命か、それとも自殺か他殺かわからないけど命を落としたよ。僕がこうして生きていられるのはルイの支えがあってこそでもあるんだ。彼女にも間違いはあるだろうけど、あまり責めないでやってほしい」 「・・・はい」  先ほどケンが勢いで発した言葉は言い過ぎではなかった。あれだけの勢いで言わなければならないことを旦那様も察してはいる。だが、それでも心のどこかでルイを庇ってしまう自分がいる。そんな自分の目を覚まさせるためだと言わんばかりに、旦那様は再度酒瓶に口をつけて大量の酒を飲む。 「たくさんの不満から一時だけだけど、酒は僕を解放してくれる。そう頻繁に飲むこともできない状況だけど、たまに飲む酒はとても心地がいい」  そう言う旦那様の傍らでケンも酒を少し飲む。辛口の酒が舌や喉を撫でる。料理のことを考えても、旦那様はどうやら生粋の辛口好きのようだ。 「―――――君は、キリングブルーかい?」  口の中に入った酒を飲み干した瞬間、完全に隙を突いた一言がケンに突き刺さる。予想外のタイミングで想定外のことを言われてケンは動揺してしまう。 「やっぱりそうか」  ケンの動揺で完全に旦那様に正体がばれてしまった。しかしそれを咎めることも罵ることもなかった。ただただ次の一口の酒を笑みをこぼしながら楽しんでいる。 「どうして俺がキリングブルーだとわかったんですか?」  ケンは無言の空間にいたたまれなくなって旦那様に問う。     
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