二、目的のベクトル

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 メディアとは嘘を伝えることが許されない。しかし事実であればどのように伝えるかはメディアの采配に委ねられていると言ってもいい。そのメディアの情報操作や印象操作を見破る術を持っていれば、事実がどこにどのような形で存在しているかを簡単に見つけ出すことができる。 「今のは簡単なものだけど、他にも見破り方はたくさんあるんだ。僕は貴族の時代にはこういったことも学んでいたよ。情報操作や印象操作っていうのはメディアの損得で行われることもあるからね。惑わされないようにしっかり学んだよ」  学んだというより学ばされたという方が正しいな、と旦那様は小声で呟いた。その学ばされた能力が今日生きることになったのは運命かもしれない。 「君はこの十年、何をしていたんだい?」 「・・・囚人をやっていました」 「囚人? まかりなりにも反政府革命軍の英雄なのに?」 「ええ、大量虐殺の罪から革命戦争中の功績を差し引きました。刑期は十年、先月出所したばかりです」  ケンがキリングブルーだということを即座に見抜いた旦那様だったが、ケンが十年も囚人だったという事実までは読み取れなかったようだ。驚きで目がパチパチと派手に動いている。 「君は、辛い人生を歩んだんだね」 「俺より辛い人生を歩んでいる人はたくさんいるでしょう」 「けど、辛くない人生ではなかった」 「・・・否定はしませんよ」  ケンはなんとなく酒を飲みたくなり、酒瓶を逆さまにする勢いで酒を体の中に流し込んでいく。     
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