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「僕は今まで・・・君がどこかで悠々自適に生きていると思っていたよ。反政府革命軍は新政府になった途端に情報操作と印象操作を使ってあたかもキリングブルーを処刑したかのように見せかけ、当人は今もどこかで英雄にふさわしい生活を送っていると、今日君に会うまで本気で思っていたんだ」
この国やこの国に住む民衆にとって、革命戦争とはいったい何だったのだろうか。その悩みは勝った反政府革命軍側のケンだけでなく、負けた政府側の旦那様にも波及した。
「戦争には勝敗が着いたけど・・・生活では全員敗者になったんだね」
物悲しそうに語る旦那様。戦争の勝敗が必ずしもその後の生活の勝敗を分けるわけではないという現実を毎日目の当たりにしている。そしてその最たる例が今ここで共に酒を飲んでいる貴族と英雄の二人だった。戦争ではお互いに勝敗が着いたが、両者ともにその後の生活は負けだ。
「いけないな。今日は深酒をしてしまいそうだ」
雰囲気と会話の内容から自然と酒が進む旦那様。しかしケンはその酒を止めようとはしない。
「もう少しくらいなら付き合ってもいいぞ」
ケンは手の中にある酒瓶を左右に振って見せる。この雰囲気を生んだのが酒ならば、この雰囲気を払拭できるのも酒だけだ。
「なら、付き合ってもらえるかな?」
「ああ」
ケンと旦那様。夜が更けていくのも気にならない二人。共に手にした酒瓶の酒を少しずつ減らしながら、お互いが初対面とは思えないくらい饒舌に言葉を交わしていた。
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