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展示場からスタッフ専用通路へと足を進めるゼフ。その後をケンも着いて行く。
「ケン、お前はもう何歳になった?」
「三十二ですね。そう考えると戦争時は二十二歳、まだまだ若かったのですね」
「ワシはもう五十四だ。当時は四十四だったが、ワシも若かったことになるな」
ゼフの言葉は重い。それは革命戦争を成功させることだけを考えていた一途で実直だった当時を後悔してのことだ。あの日あの時、今日の結果を誰が予想したことだろうか。
管理人室は小ぢんまりとした応接間のような部屋だ。小さいテーブルの傍らにある椅子にケンは腰を下ろした。ゼフは腰かけたケンにコーヒーを淹れるため、さらに奥の給湯室へと姿を消す。
管理人室の隅には山積みにされた荷物があり、デスクには散乱した書類が山積みになっている。とても仕事ができる環境ではなさそうだし、そもそも仕事をしているようにすら見えない。
「酷い有様だろう。もう半年になるか」
「何が、ですか?」
「最後の客が来てから今日までの時間が、だ」
仕事をしているように見えない。しかしそれは逆でそもそも仕事がないのだ。革命戦争は忌むべき負の歴史。故に誰もその戦争の中身を詳しく知ろうなどとは思わない。戦争記念館に足を運ぶものなどいないのだ。
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