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「ここは一応国営だ。おかげでワシは公務員だ。仕事がなくても給料は出る。しかし他に従業員を雇えるだけの資金は出ない。ワシの日課は掃除に始まり掃除に終わる。もう慣れたものだ」
ゼフは自傷気味に笑った。その様子が裁判後の自分に一瞬似ているとケンは思った。だがそのことは口が裂けても言うつもりはない。言ったところで何も変わらないからだ。
「あの頃はワシも若かった。革命戦争で現政権を打ち破ることだけを考えていれば胸が躍ったものだ。しかし終わってみれば今度は新政府となって内政を行わなければならなかった。今になって冷静に考えればすぐにわかることだが、内政など誰も経験したことがなかったのだ。仕組みさえ知らない者も多かった。一つの目標に集中しすぎた自分達の愚かさの答えがこの街だな」
支配者階級の悪政を打倒したはずが、その時の傷痕を癒すことができない。この国は傾いてしまい、そしてそれを立て直せるものが反政府革命軍の幹部クラス、つまり新政府の支配者階級となる者達の中にいなかったのだ。
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