ストーリーメーカーズ

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   * 『ねえあれ、もう載ってるよ♪』  早朝、グループトークの通知で起こされた。クルミからだ。昨日タラバが道路に大書きした魔法陣は登校中の女子高生や通勤途中のサラリーマンに発見され、画像とともにアップされありとあらゆるSNSで拡散されていた。 『夜中に闇の儀式?』 『不気味w』 『謎すぎる』 『子どものの落書きだろ』 『それにしてはクォリティー高すぎ』 『これ何ていうオカルト?』  知らない人たちに何度もリツイートされトピックになりハッシュタグがつけられている。しかしネットニュースのランキングはナントカ疑惑追求中の国会やら不倫で叩かれた芸能人の離婚らブランドの新製品情報やらでびっしり埋まっていて僕らが蒔いた種で咲いたニュースの花が入り込む余地はない。 『大成功だね?』  クルミの嬉しそうな笑顔が目に浮かぶ。 『おはよう。だな』  この温度感が大事なのだ。一日のうちのほんの数時間、気づいた人達の間だけでホットに駆け巡り明日には綺麗に忘れ去られブームにもならなければ炎上もしない、でも無関心の無味乾燥な世間という名の無機質の壁に確実に爪を立て、わずかにでも色をつけてやった、何かに取り憑かれたような熱の余韻と人知れず噛みしめる充足感。 『アサヒおはよ。起きてるのアサヒだけなの?なんだ』 『クルミが早すぎるんだよ。つか、寝てないの?』 『だってぇ。気になるじゃん?誰が先に気づいてくれるのか、ホントに見られてなかったのか、ドキドキでさ。みんな、そうじゃないの?』  ううん……  この違いって、男性と女性の差なのかな?それともクルミがそういう性格ってだけの話? 『タラバ、起きないかなぁ。ほらこの検索ワードの列。#魔法陣、#神過ぎる落書き、#黒魔術、#朝オカルト……早く見せてあげたい』 『力作だったもんな、あれ。今回のストーリーメーカーの殊勲賞だ』 『殊勲賞か。アサヒってさ、普通の子が使わないような言葉がよくぱっと出るよね。小説家志望だからかな』
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