ストーリーメーカーズ

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 仕方ないから留年した同期の奴の住所を面接用の連絡先にして、やはり同期の数少ない友人宅を日替わりで転々とした。が、向こうは社会人だし余計に肩身が狭い。それで、ネットカフェやファミレスやSNSで知り合った人たちのところを転々とするようになった――それにしてもリアルで四年からの付き合いがある友人達よりも画面上でしかやり取りしてない初対面の奴の方が親切だしこっちも気楽、ってのは一体何なんだろうな。  こう書くといい年をして深く考えずにその場しのぎの刹那的な生き方をしているようにしか見えないかもしれないが、一応僕には僕なりの考え方がある。卒業以降も仕送りを約束してくれた実家に余計な金の迷惑をかけないようにと考えて背水の陣を敷いたつもりだったんだ。が、どうも敷き方を間違えたらしい。  実家からアパートの更新料名目で振り込んでもらった金はどうケチケチ使っても連休過ぎには使い果たしてしまった――誰かの部屋に一晩泊めてもらうにも手ぶらってわけにいかないし、いつ面接連絡くるかわからないから身だしなみもそれなりにしなきゃだし。  彼女には別れ際に散々なこと言われたんだけど、反省して素直に謝ってきて欲しいな。こっちは言葉を選んで決定的なことは言ってないんだし、謝ってくれさえしたらまた喜んで世話になるんだけど。
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