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「聞いてました?全て今まで抑えてきた心の声です。辞めるって決めたら、怖いものがなくなったって言うか…」
「はぁ?今、なんて?…おい!辞めるなって言っただろう?まさか、退職願をだしたんじゃないだろうな」
「はあ、さっき出しましたね。預かっておくって言われましたけどね」
「バッ、バカヤロウ!男で揉めてやめるなって釘を刺しただろうが…」
「…バカって、酷いんじゃないですか?私だってそんなに簡単に辞めることを決めたわけじゃないです!!」
「おい、如月くんやめないか!部長すみません。後でお持ちしようと思っていたんです。これ、如月くんの退職願なんですが、どうしましょう…」
横で聞いていた課長が私を遮った。
『部長?課長の間違いでしょ?どうして総務課長に、退職願渡すの?』
私はさっぱりわからなかった。
「ああ」
望月課長は退職願を受け取るなり、半分に破るとゴミ箱に捨ててしまった。
「望月課長、何するんですか!」
「だから…如月くん、もう望月課長じゃないんだって」
『はぁ?』
翌日、掲示板に異動辞令が張り出された。
人事部部長 兼 新事業企画室長 望月慎一
新事業企画室長補佐 如月麗奈
私は息を飲んだ。
『こんなの…聞いてない…って。私、辞めるって言ったじゃない…』
及川さんと鏑木さんがやってきた。辞令の紙から目を離さずに二人が聞いてきた。
「麗奈、これ聞いてたの?」
「麗ちゃん、なんだか遠い人になっちゃったね」
私は人事部に駆け込んだ。
「望月課長…じゃない。望月部長!あれはなんですか?私、辞めたいって言ったじゃないですか!!」
「あ、おはよう、如月。げんきだな~。そうだ、一週間で業務の引き継ぎして来いよな。新事業企画室は五階だぞ~」
「もう…話を聞いてくださいよ~」
「聞く話なんかないぞ。お前の退職願は受理されてないんだからな。辞令がおりて当たり前だ。それに、あの時点では、もう決定事項だったからな…」
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