分岐点

4/18
前へ
/59ページ
次へ
「聞いてました?全て今まで抑えてきた心の声です。辞めるって決めたら、怖いものがなくなったって言うか…」 「はぁ?今、なんて?…おい!辞めるなって言っただろう?まさか、退職願をだしたんじゃないだろうな」 「はあ、さっき出しましたね。預かっておくって言われましたけどね」 「バッ、バカヤロウ!男で揉めてやめるなって釘を刺しただろうが…」 「…バカって、酷いんじゃないですか?私だってそんなに簡単に辞めることを決めたわけじゃないです!!」 「おい、如月くんやめないか!部長すみません。後でお持ちしようと思っていたんです。これ、如月くんの退職願なんですが、どうしましょう…」 横で聞いていた課長が私を遮った。 『部長?課長の間違いでしょ?どうして総務課長に、退職願渡すの?』 私はさっぱりわからなかった。 「ああ」 望月課長は退職願を受け取るなり、半分に破るとゴミ箱に捨ててしまった。 「望月課長、何するんですか!」 「だから…如月くん、もう望月課長じゃないんだって」 『はぁ?』 翌日、掲示板に異動辞令が張り出された。 人事部部長 兼 新事業企画室長 望月慎一 新事業企画室長補佐 如月麗奈 私は息を飲んだ。 『こんなの…聞いてない…って。私、辞めるって言ったじゃない…』 及川さんと鏑木さんがやってきた。辞令の紙から目を離さずに二人が聞いてきた。 「麗奈、これ聞いてたの?」 「麗ちゃん、なんだか遠い人になっちゃったね」 私は人事部に駆け込んだ。 「望月課長…じゃない。望月部長!あれはなんですか?私、辞めたいって言ったじゃないですか!!」 「あ、おはよう、如月。げんきだな~。そうだ、一週間で業務の引き継ぎして来いよな。新事業企画室は五階だぞ~」 「もう…話を聞いてくださいよ~」 「聞く話なんかないぞ。お前の退職願は受理されてないんだからな。辞令がおりて当たり前だ。それに、あの時点では、もう決定事項だったからな…」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加