1/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

佐伯は猛烈に感動していた。 ページを閉じ、傍のテーブルの上に置く。 表紙には布面積の異常に少ない衣装をまとった赤面少女。 『勇者抽選――宝くじで異世界に転生した件について』 もはやありふれたというよりジャンルの一つとして確立してしまった異世界もののタイトル。 読む前は地雷臭半端なく、正直暇つぶしにでもなればいいが程度の気持ちだったのだが。 今その本をしげしげと眺めるにつれ、内容というのは見かけによらないものだと改めて実感した。 練りこまれた異世界の設定に、そんじゃそこらのチョロインとは隔絶した表紙のヒロイン。 予想を上回る出来の良さに、自分の偏見を恥じ、感動に震えていたのだ。 佐伯は典型的な二次元オタクである。 最近はアニメにしろライトノベルにしろ楽しめるものが少なくなってきたが、まさかこんな掘り出し物に出会うとは。 さっそくノートパソコンを開いた佐伯は、本のタイトルでサーチを始めた。 この感動を独り占めしておくなんてもったいない。 ぜひとも語り合い、共有しなくては。 ネットの海で様々な意見にあい、よりいっそうの感動を深くしたところで。 しかし、佐伯は「それ」にぶちあたった。 「うわ……」 思わず目を覆いたくなる。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!