第0話 俺が異世界に行った訳

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「はぁ・・・はぁはぁ」    この数十枚のコインに己の運命が掛かっていると思うと呼吸が荒くなる    俺はドコで間違えた?    手段と方法はこれで本当によかったのか?    店のチョイスは?こんな寂れた店じゃダメだったんじゃないか?    寂れてるって事は当たらないからなんじゃないのか?    色々な疑惑が沸いては消え、後悔が津波の様に押し寄せてくる    頼むっ    願いを込め、3つ目のボタンを押す    ぼす    <ででっでれれれれーーーー・・・    画面にはこの台特有のキャラクター  丸に目と手足をつけただけの酷く適当なデザインのフィーバーくんが走り回っている映像が流れている、このままフィーバーくんがゴールすれば当たりなのだが・・・    <もうちょっと!   「おおっ?」    画面にはゴール目前まできたフィーバーくんとそれを応援する観客が映し出され、風船が空へ飛ぶ映像に切り替わる    <ばひゅーん!    (これは・・・めちゃめちゃ熱いんじゃないか!?)    どきどき    心臓が高鳴り、目の前が白くなっていく    風船が飛び去り、フィーバーくんがゴールへと駆け込む  画面には砂埃が映し出される  これが晴れた時に、フィーバーくんがゴールしていれば・・・    もくもくもく・・・   「こいっ!こいこいこい!」    <ざんねーん    砂埃が晴れると、ゴール手前で倒れているフィーバーくんの姿が!   「くっそぉぉぉおおおおおおおおお!!!」    勢いよく台座から立ち上がり、”空”を見上げて絶叫する    凶夜、魂の雄叫びーーー      終わったーーーグッバイ俺の青春  これで失うモノは何もない、あとは人間の尊厳くらいなもんだな・・・   「もうだめだ、死のう・・・そうだな一面緑に囲まれた湖でもあるところがいい・・・そこはきっと風が気持ちよくて・・・」    圧倒的な絶望が心を支配し、思わず凶行を口にする    現実逃避をし、死に場所を考えていると    ひゅう、と    ふいに凶夜の顔を風が撫でる、同時に草の強い香りが鼻についた  思わず目を開けると、空が見える    そこにはビルも陰鬱な雲も’何も邪魔するものがない’青い空があった   「え」    凶夜は思う    自分が居たのは寂れたパチンコ屋だったはずだ、と
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