第0話 俺が異世界に行った訳

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 そして、寂れたパチンコ屋に草の匂いがする風が吹くなんて事はありえない  ここで匂ってくるのは、せいぜいタバコの煙やメダルの錆くらいのはずだ    決して’見渡す限りの草原’なんかあるはずがない   「う、うえぇぇえええええ!?」    スロットで負けて叫んだばかりだったが、再度、思わず叫んでしまう    つーか、こんなん叫ばずにいられない訳がない    な、なんだ?ど、どどど、どうなってるんだ?あれ?スロットは?パチンコ屋は一体ドコに!?    慌てて、周りを確認するが、やはり見渡す限り草しかない    唯一、凶夜がついさっきまで座っていたスロットの椅子だけが草原からにょっきりと生えていた   「マジかよ・・・」    とても受け止められないが草原から生えている椅子がこれが現実だと自己主張しているようにみえた    いやいやいや、それにしてもこれは・・・    俺は草原の真ん中に椅子が生えているだけの白昼夢をみる変人だったのだろうか   「も、もしかして神隠しとかそういうやつ・・・なのか?」    本人は気づいていないがーーー    実は、さっきのスロットのディスプレイには、異世界ボーナスと言う文字が躍っていたのだ  ハズレの音声で『終わった』と思った凶夜は見逃してしまっていたのである    スロットはハズレと見せかけて、落胆させてから実はアタリという事も多々あるのだ    しかし、初心者の凶夜はそんな事はつゆ知らずーーー    何はともあれ  この日、凶夜はある意味で闇金から完全に逃げ切る事に成功した    もっともーーー混乱した本人がこの事実に気が付くのはもうちょっと先の話ではあるのだが
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