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「トワコ、飲み過ぎる前に先に寝てろ。」
「やだやだ、ずるいーシュウばっかりてっちゃんひとりじめしてー」
お喋りに酒が進んで10年前の口調に退化したトワコの高い声に、なんだかんだで居座ってしまったことを後悔した。
「もう本当に帰るよ。そっちは寝ないとヤバいだろ?」
「いや、マジでトワコ寝かせてくるから待ってろ。絶対帰るなよ。」
ごねるトワコの頭を撫でなだめながら、2人で寝室に消えていく。
シュウの手は心地いいだろ?きっとトワコは毎晩眠りにつくまでシュウに…
ひたすら孤独を飲まされる僕なんか、アリンコほどの意味も何もない。
今ごろ鳴いて喚いても届かないのに蝉の歌が続く。
ずっと前に望んだ暑い夏の終わりが、こんな形だったなんてーー
酔ってたどたどしいトワコが振り向いた。
「ねえその髪、シュウが切ったの?」
「そうだよ。」
「てっちゃんかっこいい。」
僕ももしかしたら酔っていて、聞き間違えたのかもしれなかった。
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