ホワイトノイズ

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シュウが僕の濡れた髪に手櫛で指を通す。 額に手を当て首の付け根をぐっと押されるとやっぱり気持ちいい。 「オレ、テツに絶大な信頼もらってるな。」 「だな。」 「もし目を開けたらスキンだったらどうするよ。」 「そしたらお前らの結婚式にスキンヘッドで乗り込むわ。」 シュウは後ろでアシストのチャンスを今か今かと待ち構えるニコちゃんを視線で追い払った。 「あの子どうだった?」 「お前の方がうまい。」 「当たり前すぎて逆に腹立つな。彼女やる気はあんだけど、空気読まない子で。」 「わかる。」 「今日このあとオレんちに来いよ。」 「いや、やめとく、飲みたい気分じゃないんだ。」 なんで3人の形を変えたんだ。 うずうず疼く劣等感に負けて再び瞼を閉じる直前に、シュウがコームとハサミを手に取ったのが見えた。 鏡の中の、ハサミの刃先が僕の首めがけて鈍く光っている。 おい、正々堂々職権乱用の脅迫じゃないか。 「わーった、行くよ。」 「先に帰ってて。トワコいるから。」 「…シュウ、何考えてんの?」 「何も。強いて言えば独身最後の酒をテツと飲みたいんだ。」 納得できないよ。 そもそもシュウはトワコに執着したことがあったのか? 「トワコも会いたがってる。」 ジジジ… 例の蝉が軽快なボサノヴァを凌ぎ、シュウの魔法の手にかかった僕はうとうと混濁していく。 少しくらい眠っていいだろ? 会話は放棄させてくれ。 仕事もキツイしさ。最近耳鳴りが酷いんだ。
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