プロローグ エントリー完了

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一言、言おう。 「なぜ? こうなった?」 社会とは理不尽で作られた異物である、それを知ったのは入社して一年が過ぎようとしていた時であった。法律に詳しくない上に、起こった事実は何とか受け止めようとするこの性格のせいで、ブラックな会社だった、勤め先でブラックと気が付いて八年は働いた。まず、転職するにも条件というものがある、一年そこらで止めた自分を再度雇ってくれる企業など、存在しないと言っても過言では無い。 「あぁ、転職してぇ」 現在、会社に歴八年で区切りを打ち。無職で一ヶ月を過ごしている、転職サイトを見つめながらエントリーシートを書き、送る日々だが、現26歳酒井雅はとても焦っていた。思うより上手くいかない就職活動に、高校生の時は教師、親などが、かなりのサポートをしてくれていた事に今更の感謝を心の片隅に置きながら、再度転職サイトに目を通す。 転職先は製造業、営業など様々な欄があるなか、その他という欄に目を引かれた。そこをクリックして、飛んだ先は聞いたことが無い職種ばかりだった。この世には、良く分からない、何をするか分からない就職先も沢山ある。ただただ、密閉空間で過ごす仕事など、三億を何日で使いきれるか、という職業。もはや、職業と名乗っていいのかも分からない、その定義に疑問を抱く。 その他の欄に、不思議な項目がもう一つあった。【魔王】という職種だ。昔から、ライトノベルが好きだった自分にとって魔王という単語は、特に不思議に魅かれる存在だった。 魔王という、職業詳細を見てみると【エントリー者のみに説明】と書いてあり、今の現状では詳しく説明はされないらしい。エントリーシートにこの職業を書くのも抵抗があり、なかなか筆が進まないし。同窓会の時に『今、何の仕事してるの?』と聞かれた時に『魔王だよ』という返答なんて意味が分からない。というか、警察沙汰だ。
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