1.初恋してしまいました。

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「え、ガチに初恋? 経験少なそうと思ったけど、初恋? もしかして全然経験もないの?」  経験少なそうの部分に少し傷つくが事実そうなので「はい」としか言いようがない。 「早川くん、男が好き、でいいんだよね」 「……そ、そうです。そうかもしれないって前から思ってはいたんですけど、店長ではっきり自覚しました」 「……ふうん、そうなんだ」 「遅い……ですよね」  二十歳になって初恋とか――童貞だとか。  酒のせいで熱を帯びたため息をついて泉はずるずるとテーブルに突っ伏した。  皿が音をたてるが気にする余裕もない。  店長のことを好きなんです、と言葉にならず思う一方で――眠くてたまらなかった。 「うーん……まぁそこは人それぞれだからいいんじゃないかな。俺は可愛いと思うよ」  可愛い? ってなんだろう。  ぽんと頭になにか乗ってきて、それが頭を撫でて、涼介の手だと知った。 「先輩が初恋か……。未経験でとんでもないハードル高いところに行っちゃったね」 「……」 「先輩は難しいと思うよ」  知ってる。だって店長はノンケだ。それくらい俺にもわかる。  口は重くて開かず、泉は心の中で返す。  恋人いるしね。  す、と涼介の声がふわふわした意識の中に滑り込んでくる。  恋人、いるんだ。そりゃそうだよな。恋人……いるんだ。 「ねぇ早川くん、俺さ――……あれ? 早川くん? 大丈夫? 水飲む? え……」  恋人いるよなぁ。  店長かっこいいもん。  ふわふわした中で考えながら――涼介の声は届いてこず、泉の意識は眠りに落ちていった。 ***
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